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目じりに刺すべし

2014年06月12日
  1. 女じりにさすべし
     突然ですが、「目薬」という落語をご存知ですか?
     バレ噺(エッチな落語)なので恐縮ですが、 目薬を処方された旦那が、使用法の「めじりにさすべし」を「女じりにさすべし」と読んでしまい、奥さんを裸にしてお尻の穴に目薬をさす、という話です。 ひょっとしたら「初めて聞いた」という人もいるかもしれないので、下げ(落ち)を書くのは自粛しますが、実は旦那さんの誤読も無理からぬところがありま す。
     というのは、この使用法には本当に「女じりにさすべし」と書いてあったに違いないのですから。「め」と「女」って同じ文字の書体の違いにす ぎないんですよ。もし江戸時代にコンピュータがあって、文字コードが設定されたとしたら、「め」と「女」には同じコードが割り当てられたかもしれません。
      同じ「女」という文字を「をんな」という意味をもった字として読めば漢字として、「め」という音をもった字として読めばひらがなとして扱っているというわ けです。「女狐」みたいに「め」と読むし女という意味も持つという場合は、グレーゾーンですね。結局ひらがな=漢字なんですよ。





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悲しい歴史を知る落語・目薬

 落語は大衆芸能です。世間一般のごく普通の人を対象としています。人情噺や滑稽噺、道徳的なことを諭す噺もあります。一方非常に世俗的下世話な噺もあります。特に内容が性に関するものを“バレ噺”といいます。今回はそのばれバレ噺です。

 主人公は職人さん。なかでも出職といい、大工や左官といった現場に出 向いて仕事をします。何の病気か判りませんが目を患っていて仕事に行けません。昔の職人は賃金の支払いが日払いのため、仕事に行けないと即座に生活に支障 をきたすことになります。そこで薬屋で薬を買ってきて自分で治そうとします。「中に効能書が入っているので、その通りに使いなさい」と言われたが、字が読 めないとも言えず、そのまま帰ってくる。効能書には『めじりにさすこと』と書いてあります。そういえば風呂屋ののれんに似たような字があったのを思い出し 『女じりにさすこと』と理解してしまいます。目に注すはずの目薬を何故尻に注すのか不信に思いながらも、いやがる女房を四つんばいにさせ、しりのくぼみに 買ってきた粉の目薬をのせます。女房はあまりのくすぐったさで、思わず一発屁を放つ。するとのせた目薬が飛び散り、職人の目にも入り「ああ、なるほど。こ うやって使うのか」。

ところで、浅草の本法寺というお寺に「はなし塚」というものがありま す。建立されたのが昭和一六年、戦時色が濃くなり各種芸能団体には強く自粛を強要されていた時期です。落語界では花柳界・廓噺・酒・色事などに関する噺を 五十三種選び、禁演落語としました。この目薬という噺もバレ噺だというので、禁演落語の一つに挙げられ、はなし塚に納め供養され一時演じられなくなりまし た。禁演落語の中には江戸情緒豊な名作も多く、戦後その禁が解かれた後はしっかりと現在に語り継がれています。
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 さて噺に登場する目薬ですが、内容からすると粉の目薬でなくては噺が 成立しません。ところが、使用する時点で粉状になっている目薬なんて聞いたことがありません。日本薬局方によると、目薬には固形状の物が存在しないように 厳しい基準が設けてあります。たとえ小さな砂粒であっても、目に入るとたちどころに痛み、違和感が生じるほど目は敏感です。江戸時代には「五霊膏」や「笹 屋目薬」といった有名な目薬がありました。どれも水に浸す、或いは煎じて、出来上がった薬液を目に注すもので、粉状の目薬ではありません。

「笹屋目薬」には「光明膏」「真珠散かけ薬」など数種類有り、真珠を主薬としていました。真珠は目に良く効くと賞用されましたが、内服したり、患った目の瞼の上に真珠を押し当てたり、誤った使い方をする者も多かったと言われています。

 また薬液を目に注す際には紅い絹製の布が使われたようです。「五霊膏」は薬味を紅い絹布で包み糸で結び、結び目をつまみ水に浸して滴る薬液を目に注しました。お芝居では眼病を表現するのに、紅絹を目に当てる所作があったそうです。白い眼帯よりも風情がありますね。

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